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風邪とともに去りぬ:マンチェスター編
CATEGORY : [British] 2007/12/28 13 : 55
リヴァプールに続き、マンチェスターです。
1泊しかしませんでしたが、なかなか手頃なサイズの都市でよかったです。






【マンチェスター】

マンチェスターにはリヴァプールから格安バス(なんと3ポンド)で移動です。
1時間ちょっとで着きます。
でも、体調が明らかに芳しくないので、爆睡。
あ、カンケイないって?

マンチェスターは、いかにも「都会」って場所です。
不揃いな建築様式の背の高い建物が多いです。
(ロンドンは、地域によって建築様式がある程度統一している。)
バスを降りて、ユースホテルまで歩いていく中で、一番安心したのは、英語が普通に聞こえたこと。笑

実質1日半しか滞在しないので、相当身体がしんどいのに耐え、観光開始。
ユースホテルの受付お姉さんから地図をもらったり、オススメスポットを聞いたり…。でも、このお姉さん、明らかに「趣味」が違うので、聞きもしないのに良いインディーズバンドがいるバーとか、良いDJがいるクラブとか教えてくれて、蛍光ペンでマーキングをしてくれたりしました。


   ● ● ●  ● ● ●  ● ● ●


トラム(路上電車?)に乗って、新興開発地区へ。その名も「Harbour City」すっごい埋め立て地って感じの場所です。よく考えたら、地理的にマンチェスターに「海」があるわけないんです。だから、海の匂いがしなかったのか…

目的は、ラウリー(Lowry)という複合型文化施設。名前の通りローレンス・ラウリーという20世紀を代表する英国人画家がいて、その人のコレクションがあります。ラファエロ前派のロゼッティをこよなく愛し、マンチェスターを中心に工業都市の風景を多く描いた人です。彼の絵は一見、変哲もない子供っぽい絵画に見えるんだけれど、よーくみるとスッゴイ手の込んだ質感ある絵画でビックリします。ここの常設展は、本当によくデザインされていました。「Meet Mr Lowry(ラウリーさんに会おう)」という約20分の導入映像があったり、分類の仕方や説明方法が本当に上手い。それに、エデュケーションプログラムとも上手く連動していて、何度も来たいなと思わせる場所です。が、ワタクシ、音楽人間なので途中でラウリーが愛したというバレエ「コッポラ」の上映を最後の2幕しっかり座って観ました。

この施設は、2つのギャラリー以外にもホールもあって、リーズを拠点とするOpera North(英国で唯一の黒字オペラハウスらしい)も引越し公演できます。あとは、カフェなどで打合せをするビジネスマンがちらほら…。向かいには、アウトレットモールがあって、でもナイキとか、何故か「M&S(マーク&スペンサーという自社ブランドしか扱わない大型チェーン)」が入っていて、いわゆる日本でもてはやされるトップブランドがメインではないようです。


で、ユースホテルお姉さんが「私は行ったことないけど、皆イイっていってるわよ」と教えてくれた「Imperial War Museum North(帝国戦争北博物館?)」へ。個人的には、広島の原爆記念館のイメージが生々しくて、風邪だし行く気もしなかったけれど、対岸だし、でも折角なので行ってみることに。

結果的には、この選択、よかったです。というのも、日本では絶対こういう展示方法はしないだろうというようなことがいっぱいあったから。イギリスの博物館や美術館にいて思うのは、空間の使い方が上手いことと展示の仕方が上手いこと。ただ「見せる」んじゃなくて、「魅せる」ように出来ていること。ちゃんと来場者が学べるように出来ているのね。

一観客としての感想は、やはり戦勝国、精神的なイメージが全然違う。ネガティブさももちろんあるんだけど、ポジティブなイメージも受けた。原爆についての資料もあったけれど、ギョッとしたのは冷戦時代(1970年代)に英国政府が本当に制作した「核戦争になった場合の避難の仕方と過ごし方」についてのテレビ放送。日本の戦争意識は、大抵第2次世界大戦でストップしているように思えるけれど(そして敗戦国&被害者でダメージが大きいんですって印象が強い)、でもこの博物館、本当は今も戦争は常にそこにあるんですってメッセージ性が強かったです。(ひとつだけ言わせてもらえるなら、確かに日本には初めから不利な要素が多かったわけで、日本の庶民レベルの悲惨さは英国にはほとんど無かったので、こういう展示内容になるのかなと思いました。)


7時前に市中心にもどったものの、夜はクリスマスマーケットを楽しみにしていたのに、なんとその日が最終日&6時に閉店。

「あぁ、クリスマスマーケット、お前もか!」

この国、絶対なにか間違ってる。クリスマスマーケットならクリスマスまでやってるべきじゃん。何故、クリスマスより前に撤退するのか…理解不能。


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旅行最終日。

ロンドンに帰れるのが嬉しくてたまりませんでした。とゆーのも、風邪が悪化していて、ヒーター側(イギリスにはセントラルヒーターというデロンギ社のオイルヒーターのような風貌のものが備え付けであります)のベッドに移動させてもらったにも関わらず、夜中熱をだし、大量の汗をかいて、ヘトヘト。

午前中は、マンチェスター市立美術館。ここもなかなか良い美術館です。教授オススメの場所だけあって、気づいたら3時間以上いました。19世紀の建物を2つ現代的に組み合わせてあって、見た目以上に中が広かったです。常設展の中に絵画の復元に焦点をあてた部分があって、面白かったです。モディリアーニもみれたし、ロゼッティも何枚かみれたし良かったです。特別展は150年前にマンチェスターで開かれた「Art Treasure of the UK (大英国美術至宝展?)」の回顧版で、150年前のマンチェスターの様子はもちろん(ドブとか馬小屋などの匂いのサンプルがあった←臭かった。笑)、至宝展の様子&詳細、来場者客のこと、そこで使われた音楽のことなどが、当時実際に展示された美術品の数々とともに展示してありました。音楽の展示は面白くて、マンチェスターを拠点にするハレ交響楽団の創設由来、至宝展期間中に毎日2回ずつ行われたという演奏会のプログラムの記録や当時流行った曲などが映像や写真、音のサンプルとともに詳しく展示されていました(タッチパネル式コンピューターで。)

その後、Urbisという現代美術を扱うセンターに行って、マンチェスターにある有名なクラブ(日本語だとディスコとかそんな感じ)の歴史をなぞった展示会と、世界でも高い評価を受けている広告映像や広告デザイン(商品デザインも含)の展示会をみました。この広告の展示会、英語圏の広告からの選出に偏っているのは仕方ないとしても、マーケティングとPRに興味があるワタシとしては、ココロ踊る時間でした。とにかく、うわっ、上手い!と思うのが多い。人権問題を扱うアムネスティ財団の街頭広告は、怖いほどよく出来ていたし、世界貿易機関の密輸を戒めるポスターも良かった。(フカヒレが問題になっているとはしらなんだ。)あと、テレビでみたSONYの「いかにも制作費がかかっている」CMの裏舞台がみれて面白かったです。欧州におけるソニーのブランドイメージって、日本よりもっと先進的な印象が強い気がする。

http://www.urbis.org.uk/page.asp?id=3203


このUrbisの建物は“宝くじ”による2000〜2001年にかけて英国全土で展開された芸術支援制度「ミレニアム・プロジェクト」の一環で出来ています。このプロジェクトは、建築物にしか適用されないという難点があるけれど、このプロジェクトの効果は絶大で、多くの芸術施設が改築され、カフェやショップを新たに増設されました。なぜカフェやショップが大切なのか疑問に思われる方も多いでしょうが、これは芸術施設には大切な収入源になるのです。日本では、チケットがないと施設内に入れない/入りづらいことも多いですが、英国の場合、美術館や博物館などは入場無料のところが多い上に、さらに「ミーティング・ポイント」としての社会的役割も確立されていて、ふらっときてカフェでまったりして帰る人口も多いのです。美術館や芸術施設により多くの人に訪れてもらい、より親近感をもってもらうための「カフェ」であり「ショップ」なんです。

さらに、もうひとつ画期的な「Gift Aid」という芸術支援制度があるのですが、これはまた次回に。


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今回の旅で良かったなぁと思う収穫事項:

1)地方に対する国家&地方レベル芸術支援の実体を垣間みれたこと
2)美術館/博物館の展示の方法の日本との温度差
3)それら施設にもとめられる社会的役割
4)絵画の面白さがちょっとわかってきた(苦笑)
5)ロンドンはやっぱり恵まれている



これは、全部ちょっとマジメな話です。これだけで1時間以上語れます。だから、今日は「敢えて」ここでヤメます。笑

アーツ・マネジメントはベンキョウすればするほど、現場がみたくなります。そして、奥が深い。Arts for Art's Sakeなんだけれど、でも、上手く次世代に残して、今の現代社会で有効的に「生かす」ためには国家レベル、いや、世界レベルでの「策」が必要になります。今、こうしてロンドンという「ごったがえしたちゃんこ鍋」のような場所でアーツマネジメントを学べること、本当に有難く思っています。(私の恒久的なスポンサーである母さん、父さん、アリガトウ。)





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